「君の膵臓を食べたい」で有名な住野よるさん初の恋愛長編。
分かりやすくドロドロした三角関係的な話ではない。
住野よるさんらしい、と言っては失礼かもしれない。
けれど、僕が好きになった住野よるさんの言葉だった。
内向性が強く日常に退屈を覚える男の子の魔訶不思議な体験と初めての恋愛が教えてくれるどうしようもなく襲い掛かる嬉しさや苦しさと、それをコントロール出来ないという体験の細かな描写にいつしか夢中になっていた。
そして序盤のファンタジー感から一転、リアルで複雑で難解で、でも少しシンプルなのではないかと思わせる人間の感情描写のバランスが、文字から生まれる世界に僕を引き込ませた。
人生には誰しも一度は突風が吹く。
その突風が過ぎてしまったら、あとは余生だというのは主人公の言葉だ。
とても、印象深かった。
僕の突風は吹いたのか、まだなのか、それとも今まさに吹いているのか。
若くて痛々しい考え。大人になるにつれ考えなくなるものだと感じた。
今の僕は考えてしまった。
未熟なんだと思った。
まだまだ、乗り越えていくものがたくさんあるのだと思う。
そう思いたいのかもしれない。
10年後の自分にもう一度、問うてみたい。
突風は吹きましたかと。
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