考えたこと

僕の島には僕以外にも人間がいる。時には話したり遊んだりして過ごしている。ただ、この島には少し変わった恒例行事がある。
複数人で集まると、高確率で発生するイベントで逃れたくても逃れられない。
もしかすると僕には必要な行事なのかもしれない。

僕以外の人間が楽しい空間にいる。

僕もその空間にいたはずだった。

空間だとかそんなことを認識することもなく幸せな時間を過ごしていたはずだった。

そんな幸せな時間はいつも長くは続かない。

なぜならいつも途中から、話の流れが見えなくなり、話す言葉は呪文に、笑い声は嘲笑となって聞こえるようになるから。

また話に入ることが出来れば呪文が聞き取れるかもしれないと考える。

しかし、僕は呪文を知らないし聞き取れないから流れも分からない。

そして話に入りたいという気持ちだけが頭を支配し、口を開いてみても僕の声が空気を振動させることは無く、急速に口の中が渇いていくのを自覚する。

ここでハッと自分の世界に閉じこもっている事にも気づいて、その温かい空間を見る。

その時温かい空間はいつしか船にのり、次の明るい場所へ漕ぎだしている。

僕は焦り発言をする。

僕も乗りたいんだと言葉にならない言葉でまくしたてる。

その時僕はみんなとは違う呪文を発しているみたいだと思う。

僕の感じる疎外感から生み出される呪文は僕だけのもので、うまく伝わることは無い。

ここが僕のどうしようもなく幼く、利己的で排他的な性質なんだろう。

相手には僕の感情を載せた言葉は呪文であり、相手に懐疑心を抱かせてしまったり、業腹な感情にさせてまったりする。

もしかすると傷つけているかもしれない。

おとなしく黙っていた人間の急で場違いな発言は楽しい雰囲気を妨げる。

それは望んでいない。

僕はうつむきまた黙る。

もう僕はいない方が僕の為にもいいと判断し、投げやりに距離をとる。


僕がいなくなった空間は船にのってゆっくり遠ざかっていく、そんな光景をもはや何の感情も引き起こさなくなった恒例行事のように眺め、ひとしきり一人の時間を満喫した後、また同じ島で新たな温かい空間を探す。

恒例行事だから仕方ないのだと自分に言い聞かせて、歩をすすめる。

決してこの島から出ることはない歩みをすすめる。

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