雀がいた。
空を羽ばたくにしても、地面を歩くにしても、何もかも忙しない雀。
その鳴き声も、小さく、短く、とにかく忙しない。
仕事中の僕のようだと思った。
白鳥がいた。
城のお堀の水面に一匹。
風はなく鏡のような水面に、自らの体が作り出す緩やかでなめらかな波とともに、ゆったり進み、それでいてどっしりと構えているようにも見える優雅な白鳥。
本の風景描写に酔い、その世界にたゆとうている時の僕のようだと思った。
僕は常に白鳥でいたいとは思わない。
雀であるからこそ白鳥になれる。
雀であることも嫌いではない。
むしろ、その忙しなさが楽しい時もある。
ただ世界は白鳥が忙しなく羽ばたくことを要求している。
だからこそ、僕は雀を愛さなければならない。
愛することで雀は白鳥に成長するから。
雀を蔑み、白鳥を愛でることは出来ない。
僕は雀と白鳥の両方を愛し、常に白鳥なれることを夢見る。
生きることは戦うこと、人生を愛するという事は、僕にとって、雀と白鳥を愛する事だ。
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