2021-10

お話

悲鳴

それは時雨のように、どちらともなくふらふらとおぼつかない気持であった。 涼しいと寒いの間でさまよう鳥肌の、迷った挙句にぞわぞわと、身震いにもならぬ震えに、どうにもならぬ煮え切らなさをたたえて、少年はそこから意識を逃れたいかのように虚空を見つ...
日記

記録/2021.10.04

自分の設計したところにミスがあった。 機械の動く範囲をきちんと確認していなかったからだ。 横着したわけでも、焦っていたわけでもない、もちろん適当にやったわけではない。 原因は無知である。 同じ失敗はしない。これは意気込みではない。経験が一度...
お話

ネギ

それはネギであった。 根は無く、真っ白に艶やかな葉鞘から深緑の葉身の先端まで、ささやかなグラデーションをもって違和感なく存在感を放つそれは、もしやすると自分の顔より見慣れた、どこのスーパーでも目にする長ネギであった。 その時、私は片足を地面...