青くて痛くて脆い/住野よる

読書記録

感想が、書けない

小説を読んだ感想というのを書くのは難しい。
なぜ難しいかというと、どうしても他人の考えを評価することにつながってしまうと思うから。
面白かった、面白くないの選択。感動したという言葉が用いられるか、用いられないかということを思うだけで、手がとまる。
僕1人のささいな評価なんて、何にも影響を与えないと思うが、自分にはとても影響する。
誰かにとっては大切だけれど、他の誰かにとってはどうでもいいものなんて、世の中にあふれているということは分かっているつもりだし、ふだんの僕の行動は明らかにそのどちらかを選択しているのだけれど、言葉にするというのは何故か憚られる。僕が言葉の力を恐れているからかもしれない。

感想が、まだ書けない

この感想は誰かに見せるものでも、伝えたいものでもない。
ただ、今の僕が何を読み、どう思ったのかを残しておくことで、何を捨て、何を忘れ、そして自分の価値観にそって何が残ったのかが後で分かる。
感想を書くというのは覚えておく為のようで忘れることを手助けする行為だ。その時の感情を書いて置いておくから、頭は安心して忘れることが出来る。
人間の脳というのは優秀で、案外覚えてしまっているものだ。忘れていたはずなのに、何故かふと懐かしい出来事や考えが浮かんできた経験は誰しも身に覚えがあるだろう。人間の脳は覚えるのは得意だが、思い出すのが苦手なのだ。
忘れる事で思い出すことが出来る。それも、より自分の価値観というものを含んで思い出されるから、より自分の価値観として刻まれていく。そして、思い出しやすくなる。何度も思い出す。やがて、自分の価値観として定着し、思考、発言、行動までに現れてくる。
環境が人を作るというのは、そういう事だと思った。自分が使う言葉はある程度選ぶことは出来るけれど、その選択肢として考えに浮かぶ言葉はふだんから聞いている言葉の方がより思い出されるのは当然のことだ。
また話が脱線した。感想を書けない僕が感想を書くために、感想を書くことで何かを評価することを恐れる僕に、感想を書かせる為の理由を考えたら、こんなことになった。

感想が、結局書けない

いいかげんに、感想を書こうと思う。


書き終わってから思ったことだけれど、本の内容の感想というよりも、いつもどおり、僕の話をしているだけだ。(笑)
自分大好きかよ~、、(笑)

でもまあ、いいか。この本にどんな影響を受け何を考えたのかは後からある程度わかるだろうから。

これは感想なのか?

月曜日から本格的に読み始め、今日読了した小説が、「青くて痛くて脆い/住野よる」だ。


題名というのは、多くは語らないからこそ、内容を想像させる。

読む前は、題名に何か特別な感情を抱くことは無い。

ただ、自分が何という本を読んでいるかということのみを意識して、読み進める。


読了した瞬間。タイトルは最も意味をもつ言葉になる。


この小説の中でも青くて痛くて脆いという言葉が出てきたが、その場面はあまり印象的ではなかった。


しかし、タイトルを、忘れる方が難しいと思えるくらいに、読み進めるほど深く刺さっていくのを感じた。

僕はこの小説を読むのが苦しかった。

面白いと思う瞬間はあまりなかった。

しかし、読む手を止めることは出来なかった。目をそらせなかった。

それくらい、僕のささいでリアルな人生の心の棘やしこりという部分を刺激する内容だった。

そして、たぶんこれからも棘は増え続け、いつまでも青くて痛くて脆いままなのではないかと思ってしまう。

本を読み終わった後、5年前に読んでいたらとか5年後に読んだらどう思うだろうと想像する。

分かるわけがないのだけれど、今とはまた違う見方をすることだけは分かる。

5年後に読んでいたら、どう思うだろう。

あの頃は若かった、青かったと思うのだろうか。

もし5年前に読んでいて、今改めて読んだとしたら、やはりあの頃は若かった、青かったと思うのだろうか。

もしかしたら、まだまだ青いままだと思うのだろうか。

そんな意味のない想像をしてしまうほどに、自分の人生を思わずにいられない苦しい本だった。

この苦しみを青春と呼ぶのなら、僕は一生青春から抜け出せないままなのではないかと不安になった。

青春って、さわやかだとか若者だとかいいイメージで使われると思うのだけど、こんな歳になって苦しい意味で青春しているなんて精神的に落ち着いていない大人みたいで恥ずかしさを覚える。

でも、認めなければならないと思った。

正しさだとか、正解だとか、間違っているとか、そんなこと分からない。

けれど、他者と、そして自分とこれからも生きていくのならば、忘れる事の出来ない考えだと思う。

本の中の人物の心情は文章として語られているが、自分の心情は頭の中で輪郭を持たずに存在しているから、その時その時で選択肢を作り、選び、行動する事に迷いが無いようにする為に、考える術を身に付けなければならないと思う。

言葉を知り、出来るだけ確固たる形ある選択肢を選択することが、間違った道を選んでしまった先の次の行動への時間の間隔を短くしてくれると思う。

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