弟が好きである。
私には妹もいるが、こう弟だけを取り上げ強調してしまうと、兄弟を比較する卑しい人間という印象を抱かれるかもしれないが、妹も好きである。
確かに、私はブラコン要素が少しばかり強調された性格を有しているかもしれない、しかし、それは私にはどうしようもない。
仮に妹が、「なんで私より弟の方が好きなの!」と泣き、落ち込み、自らを卑下したり、逆上してその鋭利な八重歯を光らせ、目をむき、爪を突き立てるようなことがあれば、私はこの特徴を一生、公にしないという誓いを立てたかもしれないが、我が妹のこれまでの発言、行動を鑑みるに、どう曲解してもそのような感情、兄弟間の好意の差異に懊悩たる思いを抱いたことなど、ただの一度もないと断言できる。
したがって、私はなんの気兼ねもなく、兄弟を比較し、弟が好きだと豪語するのである。
念のために今一度念を押しておきたい。
私は、弟の方が好きだと言うことはあっても、妹の方が嫌いという表現は一生使うことはない。誓ってである。何に誓うか?もちろん弟である。
弟は無口である。
言葉に消極的な私の家族においては、行動と表情が感情表現のよりどころなのだが、弟は「にまにま」専門だ。
家族とりまくリビングの、机の上に何かしら、ポンと置いてはにまにまする。たいてい、お菓子。
寝る前と起きた時。
急に無言で立ち上がり、リビング出る時振り向いて。
にまにましながら「寝る」と一言。
起きたばかりの細い目で、空腹をひとり言のように訴える。
にまにましながら「ごはん」と一言。
猫を抱いて、にまにま。匂いを嗅いで、にまにま。
Youtubeを見て、にまにま。テレビを見て、にまにま。
たまにどこかで聞いた雑学を話し、にまにま。
不機嫌な時の感情表現は、ただ一つ。「ふんっ」と鼻息を立てて、部屋にこもる。
ずいぶんと長いこと寝る。そして起きたときには、にまにまして「ごはん」。
思えば弟の言動にイライラしたことがない。
のらりくらりとひょうひょうと。それでもいつでも和の中に。
サウイフモノニ
ワタシハ
ナリタイ
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