先週、月曜日から木曜日にかけて読み進め、めでたく完走したので記録しておく。
この本を書店で手に取るまで、この著者のことも、その著作も一つも知らなかった。
本屋に入ってすぐ目につく、店が売りたい本の棚にこの本はあって、本屋大賞受賞と大きく帯に書かれていたのが目に入ったのが出会い。
「流浪の月」というキレイなタイトルに惹かれ、気づけば手に取って表紙を眺めていた。
苺のアイスの表紙なのだけれど、華やかさとは縁遠く、暗い木目調の机に黒い食器にシンプルな銀のスプーンが添えられた見た目は、一見それがアイスクリームだと気付かないほどにアンニュイな雰囲気が漂っている。
さらに良く見ると、一度アイスを救ったであろう銀のスプーンがお皿から落ちていて、机の上を汚していた。
これだけで、どういう雰囲気の作品かわかるようだった。
少し目次を見たり、最初の一文を確認したりしたが、もう読まないという選択肢はなかった。
こうして僕の家に来ることになった。
僕はなぜこの本を読んだのかっていう、その時の自分の感情と決断を大事にしたいらしい。
本から何を得たのかをまとめるのは難しい。
とても一冊の内容をまる飲みできてはいないし、かといってじっくり読み直すこともない。
大層な時間をかけて読んだのに、有意義な何かを得たかと言われれば、明確にこれを得たと言えるものがあるかどうかは怪しいし、むりやり作っても意味がない。
人にはたかが小説を読む読書にあらゆる期待を持ちすぎだと言いながら、自分の方が期待をしていることに気づく。いや、見抜かれていただろう。
この読書は娯楽だ。
だから、この小説を読んだ感想は、「面白かった」と一言言えたらそれは幸せなことなのだ。
そして、僕は「面白かった」の一言を大きく超え、この文章を綴るだけのエネルギーを得たのだから、最高の時間を過ごしたのだ。
今一度読み返しながら、一場面一場面に感想を書く時間があればいいが、まだまだ積まれた本が読まれるのを待っているので、最初に惚れた一文を書いて読書記録としよう。
甘くてひんやりしている。半透明な氷砂糖のような声だった。
流浪の月/凪良ゆう p30
なんてことはない、人の声の描写だけれど、僕はこの声(文)に惚れた。
この文章から想像して頭に響いた声がどうにも心地よかった。
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