お話

私はね、人生という全ての時間をかけて、元気玉なんかよりもっと大きなエネルギーの塊のようなものを創って、ぶっ放したいの。

アニメの世界ではさ、敵がさ、大きなエネルギーの塊みたいな殆ど絶望的な攻撃を繰り出してきて、万事休すかって時に勇敢な戦士の1人が体を張って命張って弾き返したりするじゃない。

その弾き返されたエネルギーの塊って、大抵は何もない空に飛んで行って、厚い雲の層を引き裂いて暗闇に消えていくか、月かなんかにその威力を示すように爪痕を遺すじゃない。

私はそんな感じのエネルギーの塊を人生かけて創るの。

んで、空にぶっ放すの。

というか空にぶっ放すしか選択肢はないの。

そんなもの創っても敵も何もないこの世界でぶつける相手なんていないし、下にぶっ放すのはなんか嫌、だから何もない空にぶっ放すしかないの。

でもねそのエネルギーがどこに向かうのかも、どうなるのかも分からないの。

そして、私は何も知らないまま死んでいくの。

ぶっ放すってそういう事なの。

意味なんてないの。

ただ、ぶっ放さないと気が済まないの。

ぶっ放さずに死ぬなんて考えたくないの。

もちろん、私はそのエネルギーが地球の重力なんてものともしないで、遥か彼方に飛んでいくのを想像するわ。

儚く虚しく、やりきれないような大きな塊が目的地なんて無く、ただ真っ直ぐに誰も知らない終着地点を目指して突き進んでいくのを思い描いているわ。

でも、考えてしまうの。

私の生涯かけて創ったそのエネルギーの塊は思っていたより小さかったり、大きく見えるだけで中身がスカスカだったりして、重力に負けて情けなく落ちてきちゃうかもしれないって。

そう思ったら、あれだけぶっ放したいと思っていた気持ちが嘘のようにしぼんでいっちゃうの。

情けないったらないわよ。

私はキンキンに冷えた強炭酸飲料です!っていうような弾けるような気持ちがさ、炭酸のすっかり抜けたぬるいソーダみたいになっちゃうんだもの。

その瞬間はね、もう二度と強炭酸には戻れないって思うの。

その後はね、雲を引き裂いて月に爪痕を残すことなんて忘れちゃうんだけど、どこかモヤモヤした日々を淡々と過ごすの。

でも、気づくと私はまた強炭酸飲料になっていて、ぶっ放したい気持ちになるの。

その繰り返しなの。

それに気づいてからはね、結局ぶっ放すことは無いんだろうななんて達観して、強炭酸になっている自分をどこか冷めた目でみている自分が分かるようになったの。

どうせまた炭酸は抜けるのにって。

でもね、もう決めたの。

小っちゃくても、中身スカスカでもいいの。

落ちてくるどころか、雲にも届かず消えてしまってもいいの。

どんなに情けなくて、滑稽でもいいって、そう思ったのよ。

だからね、私は今、これを書いているの。

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