悩みや気づき、考えたこと、いろいろ
ランダムワード作文9
彼のダイヤモンド。 彼は裕福な家庭の生まれである。 両親は勤勉だが、厳格ではなく、おおらかな余裕を讃えて笑顔の多い人格者であった。 だからこその経済力だったのだが、子供のというものは必ずしも親に似るものではないという儘ならなさは、古今東西、...
弟
弟が好きである。 私には妹もいるが、こう弟だけを取り上げ強調してしまうと、兄弟を比較する卑しい人間という印象を抱かれるかもしれないが、妹も好きである。 確かに、私はブラコン要素が少しばかり強調された性格を有しているかもしれない、しかし、それ...
伏見夢百衆で(記録/2021.12.05より抜粋)
伏見夢百衆という店がある。 人通り寂しい路地の曲がり角に厳めしく佇むその建屋は、京都伏見で最古の酒蔵、月桂冠の旧本店社屋を活用したおくつろぎ処である。 大正時代に建造されたという月桂冠株式会社の本店は、古き良き風情を残す伏見の街中においても...
何でもない日
拝啓 ずいぶん長い間連絡も途絶えていたというのに、急なお便り大変驚きました。 いえ、とても嬉しかったですよ。 私の自宅のポストに入っているものと言えば、電気代かガス代、水道代の督促状を筆頭に、近所にできたピザ屋のチラシやご不在連絡票くらいの...
割れ鍋を塞ぐ
割れ鍋に綴じ蓋。 そんな仕事もある。もちろん私は蓋をする方だ。 一生懸命蓋をした。くさいものに蓋をする思いであった。 仕方がない、鍋を作る立場にない。鍋を作りたいとも、進言していない。 そもそも鍋の作り方も分からない。直し方すらおぼつかぬ有...
悲鳴
それは時雨のように、どちらともなくふらふらとおぼつかない気持であった。 涼しいと寒いの間でさまよう鳥肌の、迷った挙句にぞわぞわと、身震いにもならぬ震えに、どうにもならぬ煮え切らなさをたたえて、少年はそこから意識を逃れたいかのように虚空を見つ...
ネギ
それはネギであった。 根は無く、真っ白に艶やかな葉鞘から深緑の葉身の先端まで、ささやかなグラデーションをもって違和感なく存在感を放つそれは、もしやすると自分の顔より見慣れた、どこのスーパーでも目にする長ネギであった。 その時、私は片足を地面...
ランダムワード作文8
月明り差し込み優しく光る、静寂に包まれた一室は、皇族がほっと息をつくための場所に思われた。 西の壁には皇族の往来する建屋においては、比較的静かな装いの掛け軸が飾られている。 この落ち着いた部屋であればこそ、皇族はひと時の頭空っぽを嗜むことが...
ランダムワード作文7
「絶対無理!ヤダヤダヤダ!無理だって!」 よくあるバラエティ番組のしょうもない勝負に負け、私は今、はるか下方に川を見下ろす橋の上にいる。 これからバンジージャンプをしなければならない。例の如く、早く飛べとヤジを飛ばされているところだ。 「ち...
ランダムワード作文6
今をさかのぼること80年前、タバコの煙立ち込める文学界にバウンティハンターと呼ばれ、その実態は物の怪ではないかと噂される文豪がいた。 使用必須ワード ・文学 言語で表現される芸術作品。詩歌・戯曲・小説・随筆・評論など。文芸。 ・物の怪 人に...